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深夜のお供にレッドブル?売上ではリポビタンDやオロナミンCに劣るも共有シェアでは圧倒的。

深夜のお供にレッドブル?売上ではリポビタンDやオロナミンCに劣るも共有シェアでは圧倒的。

ソーシャルリスニングという言葉を耳にする機会が増えています。2013年7月の参院選では「ネット選挙運動」が解禁され、新聞やテレビが競うようにソーシャルリスニングに取り組んだのは記憶に新しいところです。

にもかかわらず、具体的なリスニングの結果や実行する際の手順、手法については、説明が少ないのが実情ではないでしょうか。結局のところ、ソーシャルリスニングで「何ができるのか」「どういうことが分かるのか」について、疑問を抱いている人も多いと思います。

そこでこの特集では、ソーシャルリスニングがいかなるものかを事例を交えて解説していきます。そのうえで、実際にリスニングする際には「何をどのように行えばよいのか」、読者に大まかな手順をつかんでいただこうと思っています。

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■ ソーシャルリスニングとは何か

ソーシャルとは一般的に「社会の」「社会的な」を意味する形容詞として使われます。しかし、ソーシャルメディアやソーシャルゲームなどの用語においては「インターネットを介して人と人、または人とサービスがつながり『社会性』を保有する」という、非常に限定的な意味を持ちます。

従って、ソーシャルリスニングの「ソーシャル」もまた、インターネットやWebを介してコミュニケーションされる情報のことだと考えていただいてよいと思います。

基本的にはオープンなコミュニケーションが分析対象になりますが、一部クローズドなネットワーク(会員組織やコミュニティーなど)における「声」もインターネットやWebを介する「ソーシャル」である、と定義づける人もいます。

いずれにしても「人の行動(何かを言う、どこかに行く、何かを買う、など)」がソーシャルを構成し、その後ろにある「意図や意思」を透かして見ることがソーシャルリスニングであると、ご理解ください。

ソーシャルの声として、一番イメージしやすいものは、ソーシャルメディア上の「発言」です。そこでTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアにおいて、個々のユーザーが自由に発言している結果を分析し、それらを「リッスン」します。

ただし、ここには、決められたテーマは何もありません。しかも参加している人に対して、何らかの発言を求める強制力もなければ、否定的な情報を抑制する力もありません。非常に自由な場であるため、参加者の出自やプロフィールも不明です。

従って、ソーシャルメディア上の発言は誰もが一番イメージしやすいものでありながら、実はソーシャルリスニングの実行という面では「非常に難易度が高い」という厄介なものでもあります(図1)。

図1●ソーシャルリスニングの種類

これに対し、同じ発言でも「クローズドなコミュニティーにおける発言」もあります。想定顧客を数人から数十人程度、モニターとして集め、コミュニティー内で議論してもらい、その内容をリスニングします。もちろん、ここでも想定外の発言が出ることがあり、そう簡単ではありません。

しかし、あらかじめテーマを決めたり、モニターをきちんと選別することで、分析における雑音(ノイズ)を減らすことは可能です。場合によっては、コミュニティーに企業の担当者も参加することで、聞きたいトピックを集中的に聞き出すような「グループインタビュー」の意味合いを持たせることもできます。これもソーシャルリスニングの一形態です。

一例として、iPhoneユーザー10人とAndroid端末ユーザー10人の2グループを用意し、自分のスマートフォンの使い勝手に対する感想や改善要望と、他方に対するイメージを自由に語ってもらうことで商品の改善ポイントを探る、といったことができます。

さらには、世の中の大きなトレンドを「検索キーワード」から把握する方法があります。これは上記のリスニングと比べると、ある程度は定型的に分析が可能です。どういう検索ワードが増えているかを捕捉し、その言葉が増えているということは「どんな意味を持つのか」と解釈を加えます。そうすることで、世の中のはやり廃りや、興味関心の在りかを探ります。

例えば、「iPhone」と「Android」というキーワードの検索数を比較することで、どちらに関心が集まっているのかを理解し、上昇傾向や減少傾向、一緒に検索されるワードから、消費者の反応がポジティブかネガティブかを把握します。

ソーシャルをもっと広義に捉えると、アクセスログの解析やサイト間のリンク分析、ブログのトラックバック分析を含むこともできます。こうしたなかで、この特集では、誰もが思いつきやすく、しかし、実行が一番難しい「オープンなソーシャルメディアのリスニング(=ソーシャルメディアリスニング)」をソーシャルリスニングとして取り上げます。

それでは最初に、ソーシャルメディアでどんなことが分かるのかについて、分析例を紹介しながら具体的なイメージを持っていただこうと思います。

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■ 身近なエナジードリンク市場を分析してみる

ここで私が2013年2月に結果をまとめたソーシャルリスニングの一例を紹介します。市販のエナジードリンクにおける市場シェアと、ツイートによる“共有”シェアの違いを検証したものです。

レッドブル・ジャパンの「レッドブル」と大正製薬の「リポビタンD」、大塚製薬の「オロナミンC」に代表されるエナジードリンクについて、売り上げの比率とは別に、ツイート数の比率を比較したところ、売り上げ比率とツイート比率は大きく異なることが分かりました(図2)。

図2●エナジードリンクにおける市場シェアと“共有”シェア
市場シェアではリポビタンDとオロナミンCの圧勝(3分の1ずつ)だが、“共有”シェアではレッドブルが過半数を占める。ソーシャルメディアにおけるレッドブルの圧倒的な存在感が明らかになった。
そこで私は、このツイート比率を市場シェアと区別するため、“共有”シェアと呼んでいます。

売り上げの大きさでは、リポビタンDやオロナミンCの3分の1程度にとどまるレッドブルですが、ツイート数は逆に5倍以上という圧倒的なボリュームを誇っています。これはレッドブルとTwitterの親和性の高さを示しているとともに、逆に言えば、単純なツイート数だけでは売り上げの多寡を判断できないことも意味しています。

続いて、エナジードリンクが飲用される時間帯やシーンの違いについてです。

前述の3品について、どの時間帯で多くつぶやかれているか(つまり、多く飲まれているかと仮定)を分析すると、明らかな違いが見られます(図3)。

図3●つぶやきから推察されるエナジードリンクが飲用される時間帯
朝のリポビタンD、午後のオロナミンC、深夜のレッドブルという傾向が明らかに。
それによると、リポビタンDは朝の通勤前に多く飲まれています。オロナミンCは日中から夜にかけて、清涼飲料水として飲まれています。

それに対し、レッドブルは深夜帯や、ある種の“景気づけ”として飲まれていることが分かります。

そこでレッドブルについて、さらに分析を進めると「眠気覚ましに効く」という声が多く見られます。「眠いから飲む」「おかげで眠くならない」といった声が多いことから、深夜帯の「もうひと頑張り」に飲用されているのだろうと推察できます。もちろん、飲んだせいで「眠いのに寝られない」、逆に「飲んだのに眠い」といった声も少数ながら存在します。

レッドブルがどのようなシーンで飲まれているかを分析すると、「ドライブ前の眠気覚まし」「ゲームを長時間するため」「スポーツ観戦」といったシーンで、やはり眠気覚ましの効能を期待する人が多いことが見えてきます。これらも、深夜帯での飲用が多いことの一因になっていると考えられます。

しかも、ドライブやゲーム、スポーツ観戦といった“ながら”飲用が多いのが特徴です。

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■ 商品のポジショニングを読み解く

上記のような分析を行うことで、「消費者の目にどのように映っているのか」を理解することができます。ここでのポイントは、企業がどのように商品をアピールしているかではなく、消費者にどのように受け止められているか、です(図4)。

図4●レッドブルに対する深夜(午前0~5時)のつぶやき
深夜帯のレッドブルに関する声を見ると「眠いから飲む」「目が覚める」などが多い。一方「効きすぎる」という声が多くみられるのも特徴的。
ソーシャルリスニングはアンケートではないので、設問によって誘導されることのない非常にフラットな意見の集積として、一読する価値があります。当然ながら、唯一無二の真実とはなり得ませんが、これも消費者の声の1つだと理解するとよいでしょう。

以上の結果から、3品の特徴はこう言えます(図5)。

図5●ソーシャルリスニングから見えるエナジードリンクのポジショニング
今回の分析を通じて「おいしいオロナミンC」「深夜のお供レッドブル」「効果に期待のリポビタンD」と、3商品それぞれの「色」が見えたと言える。
・「おいしい飲み物」であるオロナミンC
オロナミンCは味に関する評価が高いのが特徴です。効果ではなく、味で顧客を獲得していることが読み取れます。

・「若者のオフタイムを支える」レッドブル
非常に高い共有シェアを持ち、深夜帯における若者の「楽しい私生活」のシーンでの飲用が目立ちます。

・「効果を求めるオンタイムの友」リポビタンD
疲れた時や頑張りたい時に「効果」を求めて飲まれています。特に仕事やアルバイトといったオンタイムでは、圧倒的な信頼感を持たれているブランドだと言えます。

このようにソーシャルメディアの声を聴くことで様々な発見ができます。「生の声」を拾い集めて分析し、このような発見につなげていくための具体的な方法については、次回に説明します。